
学生時代「市民参加型まちづくり」に感化され、広場や河川整備のワークショップに関わっていた。
地域の人々が自らの手で地域の空間を創造していく場に関わることにやりがいを感じていた。
大学院を卒業後は、「高野ランドスケーププランニング」という北海道の会社に入社した。同社が地域主義、原寸主義、市民参加、自力建設といった理念を掲げていて、市民自らが空間づくりに直接関わるプロジェクトを通じて地域の人々の生きがいや豊かな暮らしを生み出せるのではないかと思ったからだ。
2016年に都市計画家協会の全国まちづくり会議に携わり、「創造都市」をテーマとする特別講演を担当し、世界の創造都市の取組事例を知る機会に恵まれた。創造都市とは、「市民一人一人が創造的に、働き、暮らし、活動する都市」のことだ。このイベントの後に書いた講演のまとめを載せておく。
そのときの思いは10年近く経っても全く変わらず、会社の事業理念のひとつの軸としている。
世界的な創造都市のムーブメントと、エリアマネジメントの拡がりは、新たな地域づくりの原動力として行政や企業とともに、市民の主体性・創造性を引き出していくという思想的な共通点を持っている。
英国のEU離脱や米国大統領選の結果は、行き過ぎたグローバル化の反動によるナショナリズムの顕れとの見方があるが、裏返せば人々がアイデンティティを国家に求めた帰結と言える。
しかし、人々は帰属意識をもつのは、国家よりも都市や農村、地域コミュニティといった身近なスケールではないか。
草の根まちづくりとは、手の届く身近なスケールの空間の中で、市民による主体性や創造性を触発し、関係主体の有機的な連携を深めていくことを通じ、市民の手の中に自分たちのまちや生活を取り戻していくことなのだ。
